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英国の技術を日本へ 商社が語る「クリーン成長」分野のコラボレーション

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世界の気候危機に立ち向かうべく、温室効果ガスの排出を削減しながら経済成長を目指す「クリーン成長戦略」を掲げている英国で、日本の大手商社と英国スタートアップがタッグを組み、社会課題の解決に取り組むケースが相次いでいます。今回は蓄電システム・電力供給・洋上風力発電の3分野における実例を紹介し、日本の大手商社が英国に進出した狙いや、今後の戦略について話を聞きました。

 


伊藤忠商事とMoixa Energy(モイクサ・エナジー)

 

日本でも再生可能エネルギーへの理解が広がってきています。発電コストが高いことが難点ですが、屋根に太陽光パネルを設置する家庭が増え、東日本大震災や大規模停電に見舞われる災害が相次いだことで、非常用電源としても見直されています。

日本では太陽光発電パネルの普及を目指し、発電パネルを設置した家庭から、余った電力を固定価格で買い取る制度(FIT)が2009年11月から始まりました。買い取り期間は10年間。2019年11月以降は、多くの家庭が余剰電力を高値で買ってもらえなくなります。こうした「FIT切れ」の電力は19年だけで200万ワット、大型の原子力発電所2基分に達するため、日本の商社などは新たなビジネスチャンスと見て知恵を絞ってきました。

日本の商社が手掛ける電力事業は「発電所を建設する」「電力を販売する」の2つが思いつきますが、伊藤忠商事は着想の異なる電力事業を始めています。それが「電気を蓄える」事業です。

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伊藤忠は2020年2月、各部門に散らばっていた電力関連事業を4月から一つにまとめ、「電力・環境ソリューション部門」を設置すると発表しました。

 

「今回の組織変更は会社から大きな期待を寄せられていることのあらわれと身が引き締まると同時にプレッシャーも感じています。」

 

そう語るのはエネルギー・化学品カンパニーの電池ビジネス課長、村瀬博章さん。蓄電池の開発販売をリードした人物でもあります。村瀬さんは各家庭が太陽光発電をすることで発電所となり、家庭同士がつながることで、地域の電力需要をまかなえる次世代電力の将来を考え、製品の設計段階から当時では大容量と言われた9.8kwhを企画し、商品化に結び付けました。

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伊藤忠商事 エネルギー・化学品カンパニー 電池ビジネス課長の村瀬博章さん
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2017年に蓄電池を発売後、販売数は右上がりでしたが、村瀬さんはその年の夏、「ハード(製品)だけでは広がりがでない。蓄電池を活かす頭脳:(ソフト)はないか」と感じていました。

 

そんな矢先、ロンドンの駐在員から「面白い会社がある」という情報が届きました。その会社が、気象条件や生活リズムを分析して蓄電池を最適な状態に制御するAIエンジンを開発した英国のベンチャー企業、Moixa Energy Holdingsでした。

もともと、村瀬さんたちは英国にヒントがあると確信していました。理由は2つ。ひとつは、世界の中でも英国が電力自由化の先進国だったこと。もうひとつは日本と同じく島国であることでした。

 

「島国は他国と電気を融通し合うという概念がありません。英国の姿は日本の数年後の世界だから、手本になる。日本でも役立つ電力サービス企業がきっと英国から生まれてくる、と思っていました」(村瀬さん)

 

一報を受けた村瀬さんはすぐロンドンに飛び、Moixa社の共同経営者サイモン、クリス両氏と面会しました。意気投合して初面談で事業連携することに合意。翌18年1月に約7億円を出資して資本提携関係を結びました。Moixa社のシステムを日本仕様にカスタマイズしたうえ、商社の枠を超えたメーカーのポジションで試作品をつくるという急ピッチ作業で、FIT切れが始まる1年前(2018年11月)に、AI搭載の蓄電池の発売にこぎつけました。

 

「異例のスピード交渉とその後の開発業務でしたが、英国の会社は互いを尊重し合えるマインドがあって話しやすいし、交渉もフェアだったので、スムースでした。でも、本当の試練はここからでした」

 

FIT切れが始まった2019年11月、蓄電池製品のコールセンターがパンクしてしまう事態に。苦情の大半は「朝起きると、これまでは蓄電池がフル充電されていたのに、フル充電されていない。故障ではないか?」というものでした。Moixa社のAIは翌日の天気がよくなる(太陽光発電が増える)ことがわかっているときは朝の段階で一定の“空き容量”を作って太陽光を最大限使えるように制御を行います。蓄電池が設置されている場所の気象状況や生活様式を機械学習して発電量や蓄電量を予測・制御しています。顧客への丁寧な説明資料や動画を手配し、販売パートナーとの勉強会を重ねることでMoixa社のソフトの奥深さを理解してもらえるようになり、落ち着きを取り戻していったそうです。

 

伊藤忠がこれまでに販売した蓄電池は3万台。台数は業界2位(シェア約17%)で、容量では業界トップ(同約20%)に立ちました。

 

「ここまで精緻に予測できるAI制御装置はMoixa社だけの技術です。私たちの蓄電池(ハード)とあわせて優位点が評価された結果、売上が伸びています。今後は、『環境に優しいエネルギーを使う=環境負荷が少ない』ということを社会価値としてポイント化するなどして、新たな経済圏をつくれないか考えています」(村瀬さん)

 

 

次は、電力自由化が進む英国内で、現実のビジネスに取り組む商社の実例です。

 


丸紅とOrigami Energy(オリガミ・エナジー)

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海外電力プロジェクト第三部第一チーム長の今里将雄さん

 

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丸紅は1960年代から電力事業を始め、いまでは日本国内で23の事業を実施すると同時に、海外18カ国で45の事業を行っています。電力本部の年間の純利益は約300億円に達しています。海外電力プロジェクト第三部第一チーム長の今里将雄さんは「私が配属された2004年の利益は30億円程度でしたから、この15年で10倍になりました」と話します。

 

丸紅は2001年に、完全子会社SmartestEnergyを英国に設立しました。ここから丸紅と英国の歴史に、新たなページが刻まれることになります。

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SmartestEnergyは、1)再生可能エネルギー電源を中心に独立系の中小発電事業者から余剰電力を買い取り、電力事業者が電力の過不足分を販売・調達できる「電力卸売市場」(日本では日本卸電力取引所が2003年に開設)への卸売りや、2)卸売市場などから仕入れた電力を法人向けに販売する会社です。英国ではそれまでも電力事業を自由化して小売などの門戸が開かれていましたが、2001年に新電力取引制度が適用されました。丸紅はこの決定を新たな商機にしたい狙いがありました。

 

「最初はほとんど利益が出ない状態でしたが、根気強くビジネスを続け、いまは英国内の法人向け電力小売業で9位(シェア約8%)にまで成長しました。でも、2016年ごろから、さらに飛躍するためには新施策が必要だと感じて、あらゆる可能性を模索しはじめました」(今里さん)

 

電気は貯蔵できないため、消費電力量(需要)と発電量(供給)のバランスを保つ必要があります。SmartestEnergyが扱う電力は約90%が太陽光発電などの再生可能エネルギーで、天候などで発電量が変動するため、電力の需給バランスが安定しにくいという課題がありました。

その課題をビジネスにするための検討を繰り返し、行き着いた先が英国のスタートアップOrigami Energyとの協業でした。

 

SmartestEnegyはOrigami Energyが持つリアルタイムデータマネージメント技術を活かし、発電事業者と需要家からの発電量、需要データ、卸売市場価格データをリアルタイムで把握し、コントロールすることで顧客の経済的利益を最大化するサービスを開始しました。

 

「英国は電力自由化において先進国です。再生可能エネルギーは火力発電のように安定して発電できず、それを補うための火力発電のコストや送電コストを加味すると、電力料金が高くなるデメリットはありますが、脱炭素化を国全体で進める気風があるので、大きな商機があると考えています」(今里さん)

 

SmartestEnergyはOrigami Energyの技術で、英国内での取り扱い電力量を今後増やしていく計画で、英国で培った技術を日本や他地域での事業展開に活かしたいという構想を持っています。

 

「このシステムが発展し、再生可能エネルギー電源+蓄電池にまで適用できるようになれば、環境に配慮しながら生活の質を上げる『スマートシティ構想』につながります。ぜひ日本や他地域でも実現したいと考えています」(今里さん)

 

 

商社のビジネスチャンスは法人を相手にしたものだけではありません。国全体のビジネスといった、スケールの大きいものも手掛けます。

 


丸紅とSeajacks(シージャックス)

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2020年2月3日、洋上風力発電のプロジェクトが発表されました。場所は秋田県沖で、発電容量140MWは国内最大規模。2022年の商業運転を目指しています。日本で初の商業ベースに乗った洋上風力発電所の計画とあって、日本の新聞でも大きく掲載されました。

このプロジェクトを主導し、舵をとっているのが丸紅です。海外電力プロジェクト第三部部長代理の田代浩介さんは「画期的なプロジェクトが実現に向けて大きく踏み出したことに、社内もエキサイトしています」と語ります。

丸紅が洋上風力発電に踏み込んでいくきっかけは、官民ファンドの産業革新機構(当時)とともに、英国企業Seajacksを2012年4月に買収したことでした。

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海外電力プロジェクト第三部部長代理の田代浩介さん
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「洋上に発電所を建てるには、発電設備の据え付けやメンテナンスをする作業船が必要です。北海の洋上で活躍していた幾つかの企業をリストアップしていたが、最も実績やノウハウを持っていたのがSeajacksでした」

「日本でも洋上風力発電についてこれまでにない盛り上がりがあると感じています。秋田に続いて他の地域に広がっていけば、と思っています」

 

丸紅は今後、日本以外にもアジアや欧州で洋上風力発電の開発を進めていく計画で、「洋上風力発電の建設は日本より一歩も二歩も進んでいる」(田代さん)という英国のノウハウが日本でも活かされることになりそうです。

 

 


今回の取材で揃って口にされたことは、英国と日本の共通性でした。島国であること、会話に情が通じること、などです。ビジネスを進めるうえで、合理性が重んじられるのは間違いありませんが、ビジネスパーソン同士の意思疎通も大事な要件です。そうした意味からも、今後は電力分野に限らず、英国と日本のビジネスはますます盛んになっていく可能性を秘めています。

 

 

ライター:河野正一郎

 


英国の取り組みについてさらにご興味のある方は、英国・国際通商省が発行しています英国政府のクリーンな低炭素経済への移行の取り組みについて、また企業のビジネスチャンス、事例紹介についてまとめたレポート(日本語)をダウンロードいただけます。下記フォームをご記入いただきますとダウンロード可能ページに飛びます。

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